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「フローラの神殿」より《ホワイト・リリー》

作品名:『フローラの神殿』より「ホワイト・リリー」

額付

技法:  版画(アクアチント)、手彩色仕上げ
刊行年: ロンドン、1800年、第一版
サイズ: シートサイズ  58 x 46 cm
      イメージサイズ 45x 36 cm

《フローラの神殿》
『フローラの神殿』はルドゥーテの『バラ図譜』と並び称される植物図譜の最高峰です。
贅を尽くした第一版はソーントン博士によって、1798年〜1807年にかけてロンドンで刊行されました。
博覧強記の博物学者・荒俣宏氏は『フローラの神殿』を『史上最美の植物図譜』と絶賛しています。

イギリスの植物学者ロバート・ジョン・ソーントン(1768-1837年)は、それまでの植物図譜の常識を覆し、植物をその環境(風景)とともに表現するという画期的なアプローチを行ないました。花を主人公に見立てた、そのドラマチックな表現はピクチャレスクからゴチック的な美意識へと移行する時代のドラマチックな感覚を色濃く反映しています。

裕福な医者、植物学者であったソーントンは、私財を投げ打ち、とりつかれたかのように「フローラの神殿」の編纂にあたりましたが、そのせいで晩年は極貧の生活を強いられました。

ところで、「フローラの神殿」には大判の第一版(フォリオ版)と縮小サイズの第二版があります。第一版に、あまりにもお金をかけすぎたことを反省したソーントンは、その普及版として、より小型のクォート版での出版にトライします。しかし、クオート版と言ってもかなり大きな版型であり(ちなみにルドゥーテのバラ図譜の第一版はフォリオ判、第二版はオクタヴォ判の大きさですが、フォリオ判の半分がクォート判、そのまた半分がオクタヴォ判となります)、これまた彩色銅販画としたため、ソーントンはさらに負債を増やしてしまいます。そこで彼は国の許可を得て、「フローラの神殿」を中心とする作品群を景品に宝くじを発行し、起死回生をねらいます。しかし、この企ても結局は景品にお金がかかりすぎて、彼はまたまた大損をしてしまいます。それで、ソーントンの宝くじ発行という大博打のきっけとなった第二版は「くじ判」と呼ばれています。


《ホワイト・リリー》
このホワイト・リリーは第一版しかありません。ホワイト・リリーの第二版(くじ版)は存在しないのです。

この絵の特徴は何と言っても、真っ白なユリの花と漆黒の闇に沈んだような暗い背景とのドラマチックな対象にあります。暗い背景からくっきりと浮かび上がる白い百合の妖艶とも言える美しさは傑作揃いの「フローラの神殿」の中でも群を抜いています。

よく見るとこの暗い背景はただの暗い陰ではなく、上の方は何百年をいう時を生き抜いてきた大木の幹、下の方は苔類に覆われた湿地帯の地面と細かく描きわけられているのです。暗部をただの闇(黒色)として表現するのではなく、よーく見るとそこにある物がしっかりと描かれている。でも、うるさくない。
この「ホワイト・リリー」は名画の条件を難なくクリアーしています。

そして、背景が闇一色だと視線が遠くにいかない。短い距離で終わってしまう。それを避けるために右上に遠景に突き抜ける空間を確保しています。これは、ティツィアーノやティントレットなどヴェネツィア派の巨匠たちの肖像画で、必ず背景の一部に窓があって、遠くの風景や青空が見えている構図になっているのと同じ手法です。

この絵を見る人は、遠くに見える風景の穏やかな気分と前景のホワイト・リリーの妖艶さとの間を、目と心で往来しながら、何か劇的な展開の予感に胸騒ぎを覚えるに違いありません。まさに「フローラの神殿」の住人にふさわしい絵ですね。
販売価格 480,000円(税込518,400円)
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About the owner

クマさん

「ルドゥーテのバラの庭」を運営するウーゴズのクマ社長は、長年美術館や博物館向けの展覧会企画に携わってきました。最近は生来のネイチャー志向が目覚めたのかウーゴズのオフィスを植物でいっぱいにして、室内でいかに植物をうまく育てるかに挑戦し、「植物男子ベランダ―」ならぬ出窓でパッションフルーツを育てる「デマダー」を名乗っています。そんな中でルドゥーテに出会い、今春は長崎県立歴史文化博物館での「宮廷画家ルドゥーテの『バラ図譜』展」に企画協力させていただきました。そして、アートと植物学が見事に融合したルドゥーテのバラの絵の素晴らしさを展覧会で鑑賞するだけでなく、もっと多くの方々に身近に感じていただければとの思いからこの「ルドゥーテのバラの庭」を立ち上げました。

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